今回は、NISA・iDeCoの枠をすでに使い切っていて、それでも投資に回せるお金がある方、あるいはもう少し税金控除を積み増したい方向けの記事です。(NISA・iDeCo・SOVANIそれぞれの制度としての比較は、前回の記事で整理しました。今回はその中の「普通の課税口座(特定口座)と比べると|意外と互角かも」の部分を、もう一段掘り下げます。)
前回の試算は年利5%固定での比較でした。ただ、運用利回りの前提を変えたら結論も変わるのでは?と思い、今回は年利3%・5%・7%の3パターンで、一般口座でオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)を買う場合と、SOVANIに加入する場合を比べ直してみました。
先に率直な結論を言うと、くらげ父さん自身は月7,000円(生命保険料控除適用範囲の金額)でSOVANIに加入していますが、正直なところ、実際に資産を作るという意味では一般口座でもSOVANIでも、どちらでもいいのかもしれないというのが今の考えです。やはり保険はいらないのでは、むしろ本当に保険が必要なら、安くて手当(保障内容)が厚い掛け捨ての方がましなのでは、と考えが変わってきました。ただ、ここも基本的には「保険は不要」だと思っていて、ある程度お金を貯めたら、それをさまざまなことに使える「自分保険」として考えればいいという考え方です。詳しくは「保険不要論と福祉制度についての記事」で書いています。
これまでのくらげ父さんの考え
- NISA・iDeCoを最優先
- SOVANIのような投資型生命保険(控除枠内で)
- 一般口座
↓ 今回の記事を作りながら
- NISA・iDeCoを最優先
- 一般口座
先に結論だけ知りたい方向けに、まとめます。
(年間84,000円(月7,000円)を20年間積み立てた場合の試算です。生命保険料控除は所得税分の上限40,000円がちょうど適用される払込額を想定しています)SOVANI(低コストな特別勘定)が一般口座(オルカン)に対して有利でいられる利回りの上限は、年収帯(所得税率)によって変わります。
| 所得税率 | 課税所得の目安 | 額面年収の目安 | 保険が有利な利回りの上限(概算) |
|---|---|---|---|
| 5%・10% | 330万円以下 | 〜400万円程度 | 保険がそもそも有利にならないケースが多い |
| 20%(本試算のモデル) | 330万〜695万円 | 600万円台後半〜900万円弱 | 年利5%台前半まで |
| 23% | 695万〜900万円 | 900万円台前半 | 年利5%台後半まで |
| 33% | 900万〜1,800万円 | 1,000万〜1,500万円程度 | 年利7%前後まで |
- 税率(年収)が高い人ほど、生命保険料控除の節税額(円換算)が大きくなるため、保険が有利でいられる利回りの範囲は広がる傾向がある
- ただし、その上限を超えて一般口座に逆転された場合の負け幅も、税率が高い人ほど大きくなる
- SOVANIで高コストな特別勘定を選んでしまうと、どの年収帯・どの利回りでも一般口座(オルカン)の方が有利
- 経過年数で見ると、SOVANI(低コスト)の有利さは序盤〜中盤で先に効いてくるため、低〜中利回りでは20年間逆転が起きないケースが多い
なぜこう思うようになったのか、その根拠を以下で詳しく見ていきます。
補足:一時所得は「給与などと合算した後」の税率で決まります。解約差益から50万円を引いて1/2にする、というのはあくまで一時所得側の課税対象額を圧縮する計算です。税率そのものは、その年の給与所得など他の所得と合算した後の、課税所得全体に対する税率(総合課税)で決まります。冒頭の表の「所得税率20%」などは、解約する年の給与所得と一時所得を合算した後の、その世帯の最終的な限界税率を指しています。一時所得だけを取り出してその税率が課税される、という話ではありません。
本試算は、積立中の20年間(または14年間)を通じて同じ年収帯であり続けるという一つのモデル世帯を、生命保険料控除の節税額計算と、解約時の一時所得の税率計算の両方に共通して使っています。ただしこれは在職中に解約するケースの想定です。退職・早期リタイア後など、他の所得がない(または少ない)年に解約する場合は話が変わります。合算される所得が小さいほど限界税率は下がり、解約時の税負担は軽くなりやすくなります(逆に生命保険料控除自体も、その年に納める税金がなければ効果が出ません)。
前提条件|今回の試算で使った数字
前回の記事と条件をそろえるため、年間84,000円(月7,000円)を20年間積み立てるケースで試算しています。生命保険料控除がちょうど頭打ちになる金額であり、くらげ父さん自身がSOVANIに加入している金額でもあります。
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 積立額 | 年間84,000円 × 20年(総額168万円) |
| 一般口座(特定口座)の商品 | オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)、信託報酬 年率0.05775% |
| 一般口座の税金 | 売却益に対して20.315%(申告分離課税) |
| SOVANIの費用 | 前取り3%(毎回の保険料払込時)+維持費用 年率1.2%+特別勘定の信託報酬相当 年率0.06〜0.86% |
| SOVANIの税金 | 解約時は一時所得扱い。特別控除50万円を引いた上でさらに1/2にした金額に課税 |
| 生命保険料控除による節税 | 所得税率20%+住民税率10%(合計実質30%)を想定し、20年累計21.6万円。この税率は課税所得330万円超695万円以下の区分にあたり、目安として額面年収600万円台後半〜900万円弱程度の会社員世帯を想定しています(手取り額ではありません) |
※あくまで簡易的なシミュレーションです。実際の税率・運用成績・商品の費用は個人や商品によって異なりますので、大まかな傾向をつかむための参考としてご覧ください。
利回り3パターンで比較した結果
20年後の税引き後手取り額(生命保険料控除の節税分を含む)を、利回り別にまとめた表がこちらです。
| 利回り | 一般口座(オルカン) | SOVANI(低コスト特別勘定) | SOVANI(高コスト特別勘定) |
|---|---|---|---|
| 年利3% | 約213万円 | 約215万円 | 約200万円 |
| 年利5% | 約254万円 | 約255万円 | 約239万円 |
| 年利7% | 約307万円 | 約302万円 | 約282万円 |
(緑色のセルが、その利回りで最も手取りが多かった選択肢です)
年利5%の結果は、前回記事の試算(オルカン約251万円、SOVANI低コスト約255万円)とほぼ同じ水準になりました。試算の前提が一貫していることの確認にもなったかなと思います。
ここで注目したいのは差額の動き方です。
- 年利3%:SOVANI(低コスト)がオルカンより約1.6万円有利
- 年利5%:SOVANI(低コスト)がオルカンより約1万円有利(差が縮まっている)
- 年利7%:オルカンがSOVANI(低コスト)より約4.7万円有利(逆転)
細かく利回りを刻んで調べてみると、年利5.4〜5.5%あたりが逆転ポイントでした。それより利回りが低ければSOVANI(低コスト)がやや有利、高ければオルカンがやや有利、というのが今回の試算での傾向です。
この「5.4〜5.5%」という数字は、あくまで本試算のモデル世帯(額面年収600万円台後半〜900万円弱、所得税率20%)を前提にしたものです。生命保険料控除の節税額(円換算)は税率が高い人ほど大きくなる一方、解約時の一時所得への課税増は運用益が50万円の控除枠を超えた部分にしか効かないため、この試算の利回り範囲(3〜7%程度)では、税率が高い人(年収が高い人)ほど保険が有利な利回りの範囲がむしろ広がる傾向があります。目安として、所得税率33%(課税所得900万円超1,800万円以下、額面年収1,000万〜1,500万円程度)の場合、保険が有利な範囲は年利7%前後まで広がる計算になります(概算です)。ただしその上限を超えて一般口座に逆転された場合の負け幅も、税率が高い人ほど大きくなります。運用益が大きく膨らむ高利回りの局面では、税率の高さがそのまま解約時の税負担増として跳ね返ってくるためです。
一方、SOVANIで高コストな特別勘定を選んでしまった場合は、利回りが上がれば上がるほど一般口座(オルカン)との差が開いていきます(3%で約13万円差だったものが、7%では約25万円差に)。
補足:年利3%では、実は保険側の解約時の税金がほぼゼロになっています。年利3%では20年間の運用益が特別控除の50万円の枠にほぼ収まってしまうため、一時所得としての課税対象額がゼロに近くなり、出口の税金がほとんど発生しません。つまり低成長シナリオでは、保険側は「生命保険料控除による節税」と「出口課税がほぼ発生しない」という二重の税制メリットを受けていることになります。利回りが上がって運用益が50万円の枠を超えてくるほど、この二重メリットのうち後者が先に薄れていく、というのが今回の試算の裏側にある構造です。
何年目で逆転するか|経過年数で見てみる
「結局、何年目まで我慢すればいいのか」が気になる方向けに、20年間を1年ごとに区切って、一般口座(オルカン)が逆転するタイミングを調べてみました。
| 利回り | SOVANI(低コスト)からの逆転年 | SOVANI(高コスト)からの逆転年 |
|---|---|---|
| 年利3% | 20年間、逆転なし(SOVANIが有利なまま) | 13年目 |
| 年利5% | 20年間、逆転なし(SOVANIが有利なまま) | 14年目 |
| 年利7% | 19年目 | 14年目 |
ここから見えてくるのは、SOVANI(低コスト)の有利さは、序盤〜中盤にかけて先に効いてくるということです。生命保険料控除による節税(年10,800円)は積立を始めた初年度から毎年コツコツ積み上がっていくのに対し、費用面での目減りは運用資産がある程度大きくならないと金額として効いてきません。そのため、年利3%・5%のように利回りが穏やかな場合は、20年経ってもSOVANI(低コスト)が最後まで有利なままという結果になりました。逆転が起きたのは、年利7%というやや高めの想定を置いたときの、しかも19年目という終盤だけです。
一方、SOVANI(高コスト)の場合は、利回りに関係なくだいたい13〜14年目あたりで一般口座(オルカン)に逆転されています。これは、高コスト特別勘定の費用(年率2.06%相当)が利回りの水準によらず一定の重さでのしかかってくるため、逆転のタイミングも利回りにあまり左右されない、という見方ができそうです。
まとめると、それでもSOVANIをやるなら、低コストな特別勘定を選んだ上で、短期(数年程度)で解約する予定がないか確認しておくのが最低限の安全策にはなりそうです。ただし、そもそも冒頭で触れた通り、税制優遇だけを目的にこの商品を選ぶ必要性自体、大きくはないというのがくらげ父さんの実感です。
なぜ利回りが上がるとオルカンが有利になるのか
理由はシンプルで、生命保険料控除による節税額は「利回りに関係なく毎年10,800円」という固定額なのに対し、SOVANIの維持費用(年率1.2%+信託報酬相当)は運用資産に対する割合(%)でかかり続けるからです。
利回りが高くなって運用資産がどんどん増えていくと、その資産に対して毎年かかる「率」のコストも一緒に膨らんでいきます。ところが節税額のほうは84,000円という積立額で頭打ちになっている以上、利回りが上がっても増えません。結果として、利回りが高い場面ほど「率でかかるコスト」の重みが増し、「定額の節税メリット」の重みが相対的に薄まる、というのが今回の試算から見えてきた構造です。
これに加えて、先ほど触れた「出口課税」の面でも同じ構造が働いています。低成長で運用益が50万円の特別控除内に収まっている間は保険側の出口課税がほぼゼロですが、利回りが上がって運用益が控除枠を超えてくると、保険側にも課税が発生し始めます。つまり「維持費用の重み増し」と「出口課税の発生」という2つの要因が、利回りの上昇とともに同時に保険側の不利に働く、というのが今回の試算のより正確な構造です。
逆に言えば、オルカンのように信託報酬が年率0.05775%とほぼゼロに近い商品であれば、利回りが上がってもコスト面の目減りがほとんど発生しないため、複利の効果をそのまま享受しやすい、とも言えそうです。
外貨建ての変額タイプの保険でも大きな傾向は変わらなそう
「外貨建てでSOVANIのような変額タイプの積立保険だったらどうなるか」という疑問もあると思います。為替変動という別の変数は加わりますが、コストの構造(契約時の前取り+運用資産に対する年率の維持費用)そのものは、円建て・外貨建てで大きくは変わりません。そのため、「利回りが上がるほど率でかかるコストの重みが増し、定額の節税メリットが相対的に薄まる」という今回の傾向自体は、外貨建ての変額タイプの商品でもおおむね当てはまるだろう、というのがくらげ父さんの見立てです(もちろん商品ごとの費用体系は個別に確認が必要です)。
収入がなくなった期間があるとどうなるか
ここまでの試算は、20年間ずっと課税所得があり、生命保険料控除がフルに効き続けるという前提で計算しています。ただ、会社を辞めて収入がなくなる期間があると、この前提が崩れます。
生命保険料控除は、あくまでその年に納める所得税・住民税があってはじめて効果が出る仕組みです。収入がなく課税所得がゼロの年は、保険料を払い続けていても控除自体は使えるだけで、節税額(今回の試算でいう年10,800円)はその年に限りゼロになります。つまり、
- 課税所得がある間 → 節税額10,800円/年がしっかり効く → 今回の試算どおりSOVANIが有利に働く
- 退職などで無収入になった期間 → 節税効果が途切れる → その期間だけ、SOVANIの相対的な有利さが薄れる(オルカン寄りの結果に近づく)
とはいえ、契約期間が20年以下で、無収入になる前にほぼ払い込みが終わっているようなケースであれば、そもそも今回の試算で見た逆転ポイント(低コストなら年利7%・19年目あたり)に届く前に契約が完了することが多く、大きな影響は出にくいと考えられます。逆に、早期退職やフリーランスへの転身などで無収入期間が長く続く見込みがある場合は、その期間分は節税効果を割り引いて考えたほうが実態に近い試算になりそうです。
月7,000円(控除枠)を超える分は、素直に一般口座でいい
ここまでの「ほぼ互角」という話は、あくまで生命保険料控除が効く年間84,000円(月7,000円)までの範囲での話です。控除の効かない部分、つまり月7,000円を超えて積み立てる分については、話が変わります。同じ条件で、控除の効果を除いて試算し直すと、こうなりました。
| 利回り | 一般口座(オルカン) | SOVANI(低コスト・控除なし) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 年利3% | 約213万円 | 約193万円 | オルカンが約20万円有利 |
| 年利5% | 約254万円 | 約233万円 | オルカンが約21万円有利 |
| 年利7% | 約307万円 | 約280万円 | オルカンが約26万円有利 |
控除という下駄がなくなった途端、前取り3%と維持費用年率1.2%というコストがそのまま重荷になり、どの利回りでもオルカンが明確に有利という結果になりました。そこに、解約控除で契約から数年程度は身動きが取りにくいという自由度の低さも重なります。控除が効く月7,000円までなら税制面での互角さは残るものの、それを超える分は素直に一般口座(オルカン)に回すべきというのは、はっきりした結論だと思います。
- コスト・手数料の低さを最優先し、将来の値上がりをできるだけそのまま享受したいなら → 一般口座でオルカン(多くの人にとって、これが基本線になりそうです)
- それでも「簡単には引き出せない強制積立の仕組み」がどうしても欲しい、かつ担当営業の方を信頼できる(前回記事で触れた基準です)なら → SOVANIは月7,000円(控除枠)までの限定的な選択肢としてアリ。それを超える分は一般口座(オルカン)へ
- 高コストな特別勘定しか選べない、あるいは選ぶ予定なら → 素直に一般口座(オルカン)の方が有利になりやすい
NISA・iDeCoの枠をすでに使い切っている方にとっても、突き詰めると「純粋な損得」だけで見ればほぼ拮抗する場面もありますが、強制積立の仕組みへのニーズがない限りは、一般口座を選ぶ方が素直な場面の方が多いのかもしれません。
ちなみに、SOVANIには「保険機能」もついてきますが、実際どこまで頼りになるのかは、数字だけでは見えてこない部分です。この点は、続編の記事「SOVANIの「保険機能」は本当にあるのか?学資保険・ドル建て終身保険と比べてみた」で詳しく掘り下げているので、気になる方はあわせてどうぞ。
まとめ
- 年間84,000円・20年間の試算では、年利5.4〜5.5%あたりが一般口座(オルカン)とSOVANI(低コスト特別勘定)の逆転ポイント(年収帯ごとの詳しい上限は冒頭の表を参照)
- SOVANIの維持費用は運用資産に対する年率でかかり続ける一方、生命保険料控除は定額のため、利回りが上がるほどコストの重みが相対的に増していく
- SOVANI(高コスト特別勘定)を選んだ場合は、年収帯・利回りによらずだいたい13〜14年目で一般口座に逆転される
- 控除が効く月7,000円(年84,000円)を超える分は、控除という下駄がなくなるためどの利回りでも一般口座(オルカン)が明確に有利。SOVANIは控除枠の範囲にとどめるのが合理的
- 外貨建ての変額タイプの保険でも、コストの構造自体は大きく変わらないため、同じ傾向がおおむね当てはまりそう
※本記事は2026年7月時点で公開されている制度や、くらげ父さん自身の理解・簡易的な試算をもとに作成しています。実際の運用成績・税率・商品の費用体系によって結果は変わりますので、個々の判断にあたっては必ず最新の公的情報や目論見書、専門家にご確認ください。
くらげ父さん、今日も漂流中🪼


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